テクノロジー番外編 転覆巨大客船の引き起こし大作戦

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◆大型豪華客船　コスタ・コンコルディア号　座礁事故
　2012年1月13日、乗客４２００人以上を乗せたクルーズ客船コスタ・コンコルディア号が、イタリア近海ジリオ島に接近して座礁。この事故では乗員、乗客４２００人のうち３２人が死亡し、１５０人が負傷。このうち６５人は手足のまひや切断、視力喪失などの重傷を負いました。
　この事故の詳細は、以前にテクノロジー記事　「広くて深い旅のカタチ　クルーズ旅行」で紹介しています。

　事故後、船長が乗客より自身の脱出を優先し、その後も救助放棄とも言える不誠実な対応をしていたが明らかになり、世界中から非難を浴びました。当時の乗組員や客船運営会社のスタッフら5名は、すでに有罪判決がくだっていますが、フランチェスコ・スケッティーノ元船長の公判は現在も継続中です。

◆船体撤去への準備
　巨大な障害物と成り果てたコスタ・コンコルディア号は、撤去に向け、まず船に積まれた約2400トンの燃料の抜き取りを行い、作業は2012年3月後半に終了。　同時に撤去を担当する企業の選定が進められていきました。

　同客船の運行会社コスタ・クロチエレは、撤去作業をめぐって入札を実施し、６種の計画案を検討の結果、2012年4月に米タイタン・サルベージと伊ミコペリの２社が、３億ドル（約２４３億円）以上で船体の撤去を行うと発表しました。
　イタリアの市民保護当局が承認した両社による計画では、船体を8月までに安定させ、11月から2013年1月にかけて、横倒しになった船体を起こし、再び海に浮かべて近くの港に運ぶという内容でした。

　しかしながら、作業の進捗は大きく遅れており、全長290メートルの船体を離礁させようという前代未聞の作業は、現在も進行中です。

　イタリア当局は、撤去作業が進まない事について、「環境汚染を防ぐことを第一に作業を進めているが、例を見ない初のオペレーションであるため予期せぬ障害に突き当たる事が多く、微調整の繰り返しとなってしまう。作業員等は常に12時間勤務で対応しているだけに、当局としても可能な限り迅速に撤去を完結させたい」とのこと。
　
◆船体撤去手順
　コスタ・クロチエレが発表した「コスタ・コンコルディア」の船体撤去計画では、作業手順は以下の各段階をこなしていきます。

（１）船を固定したあと、海中にプラットフォーム（構造基台）を建造する。水を入れられるケーソン（浮き箱）を海面上に出た側（左舷）の船体に固定する。
（２）プラットフォームに固定された2基のクレーンで船体を引き揚げ、ケーソンに水を入れその重みで船体を直立させる。
（３）船体が直立したら、もう一方の側（右舷）にもケーソンを固定する。
（４）右舷・左舷両方のケーソンの水を抜き船体を浮き上がらせる。
（最終段階）客船船体を曳航船で、港まで牽引する。専用ドッグに入れ、解体する。

◆いよいよ船体直立作業へ
　現在上記段階の（１）は完了しています。巨大な船体を撤去にむけ、いよいよ段階（２）の、岩場からゆっくり吊り上げて直立させる作業が、今週にも開始される見込みです。


　成功すれば海難事故処理史上で最大の成功例となりますが、ひとつ間違うと船体が海中の斜面を転げ落ちて、サンゴなど貴重な生物をズタズタにする恐れもあり、緊迫の作業となります。

　船を直立させる作業は、開始から８～１０時間かかる見込みです。
　タイタン・サルベージ社の上級サルベージマスター Nicholas Sloaneさんは、自身のキャリアの中で最大サルベージ活動になる、極めて慎重に作業していくと話しています。

タグ：テクノロジー 雑談